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彼の止まった時間と過ぎ行く彼の季節
五 君を呼ばふ
柔らかい髪を撫でたら
君が僕の名前を呼んだ
僕は嬉しくて答える
君の声に応える
柔らかな髪を食んで
柔らかな頬をついばんで
君の声を聞きながら
真っ白な眠りにつく
22:25 - 2016年5月13日
隣で眠る君の、枕に沈んだ髪を見て、それを触りたくなる。
細くて柔らかそうな艶ののった色素の薄い髪。
そっと指で触れたら、思った通りふわりと柔らかくて、僕の指先が嬉しい。
そのままふわふわと撫でていたら、君が僕の名前を呼んだ。
「何?」
僕は嬉しくて答える。
「何してるの?」
君は僕に訊ねた。
訊かなくてもわかるじゃん。
こうして今、君の髪を触っているのは僕だよ。
君の髪を撫でていいのは僕だけだよね?
この先も、僕だけが君の髪に触れられるんだよね?
君の柔らかな髪を食むと、君は身じろぐ。
「なんだよ。くすぐったいだろう」
君はそう言って、僕の方へと寝返りを打った。
僕は、君の白い頬に頬ずりをする。
さっき風呂に入って、ヒゲを剃ったばかりの君の白いすべやかな頬。
君は毛が薄いから、三日に一度程、入浴の時にだけヒゲを剃るんだ。
君が体毛が薄いことを気にしているんだって、僕は知っているよ。
「もぉ……なんだよ、気持ち悪いな……」
君は字面だけ嫌がりながら、いつも声は甘いんだ。
きっと嫌がっていないんだよね。
君も僕のこと好きだし、僕が髪や頬に触れるのが好きなんだよね?
僕は君の頬をついばむ。
君が照れ隠しの不満の声を漏らす。
僕はその声を聞きながら、目を瞑り、ゆっくりと眠りに落ちていく。
目が覚めても、また君が目の前にいますようにと願いながら……。
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